古本屋の三種の神器

 さて、本棚きちんと配置されたところに、今度は本を並べてゆくのですが、その本は最良の状態でしょうか。汚れた本をそのまま陳列することはできません。某大手チェーン店ではグラインダーを使って、小口や天を削り、新品同様にして古い本の蘇生を行います。あまりに削りすぎて、角を丸くし、スピンまで切ってしまうこともあるということです。蔵書家はそこまでやるのを嫌う人がいます。何も本を削らなくても、と。古い本はそれだけ歴史を潜り抜けてきた風格があります。五十年、百年の匂いが染みついているのです。それはそれでマニアにとってはその本の「味」なのです。洗濯するように締麗に表面を研磨する必要はありません。

 岩波文庫でも昔のものは、カバーなどなく、茶色に焼けたパラフィン紙が巻いてあります。それが邪魔だと思って剥いで裸にしてしまうと後々困ったことになります。マニアは元パラといって、最初からついているパラフィン紙を大事にするからです。帯も捨ててはいけません。帯があるないでは、文芸書の高いものでは何千円も価格が変動することがあります。こんな帯に何千円と笑う人もいますが、蒐集家はできるだけ完璧な状態を求めます。古本屋は、新品という言葉は使えないので、ものすごく新しい状態を極美といいます。その下が美本。まあまあのものは並程度。本の状態については、実に色々な言い方があるのです。

 古本屋の三種の神器は、鉛筆、消しゴム、マジックリンです。それがなければ仕事ができないといっても過言ではありません。鉛筆は本の後ろ見返しに値段を書くため。消しゴムは本の線引きしたものを消すため。そして、マジックリンは、カバーの汚れ落としの役割を果たします。古本は常に最良の状態で陳列しなければなりません。仕入れた本はまず最初にページをめくってざっと状態をチェックします。学術書や大学の参考図書などは線引きをしていたり書き込みがある場合が多いのですが、安い本なら、消す手間暇が大変なので、特価台へと移動させます。もしも、高めの本なら、多少の鉛筆線引きは消しゴムで対応します。ただし、赤鉛筆は消しても跡が薄く残りますし、マーカーで引かれた本はもうどうすることもできません。資料としても高価な内容の本は、線引き有りという表示をして、安価で出品するほかありません。消しゴムは、柔らかめのものより硬質なプラスチック消しゴムの方が紙が裂けないでいいようです。線引きを消すには、ページの下を片手で押さえ、ページが破けないように注意しながら行いましょう。

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